「日本物理学会誌」第54巻(1999年)第1号 より


「会誌の索引、web で公開!」

伊藤 伸泰 <東大工>

何事にも節目というものがあり、人生ならば 60年目などと決まっています。 特別な数が定着していなければ、慣れ親しんでいる十進法できりのよいところが 節目となるわけです。もとより何事も、1回1回の積 み重ねで、当事者としては50回だから特別どうということはない筈なのです が、やはり日頃は神経を配り切れてない部分というものがあるもので、節目 の年にはそういった部分の穴埋めに追われるわけです。

さて、物理学会では会員の情報交換の場として会誌を毎月1回発行しています。 私が本誌編集委員となったのは、会誌50年という節目の年、1994年でした。 当初は、50周年の特別記事などもあり、やはり節目というのは気持ちが いいものだなあ、なんて暢気に構えていました。が、甘かった。 前の委員から引き継いだ50周年の特別企画に紛れて、江沢洋編集委員長 から「学会誌の総索引」作成なる企画提案されました。 いったいどこから手をつけていいのか途方に暮れてしまう企画ですが、 できそうもないと諦めて却下する間もなく動き出してしまいました。 というのも、江沢夫妻が主な記事の題目などを入力した データベース(収録7140件)をつくってしまったのです。

当初は巻、号ごとの索引をベースに著者名や題名からの索引をつけた冊子を 想定して、50期の委員会で検討しはじめました。 結局、今日的な視点から新しく整理しなおした、分野分類や キーワードからの索引もつけようということになりました。 今日の物理学の鳥瞰と用語集の性格も狙おうというわけです。 こうなると、データベース化された各記事それぞれを、分類し、 キーワードをつけ、さらに検索向きに整理する必要があります。 キーワードも、題目から想像できるものをつけるという簡便な方法ではなく、 原文にあたった上でつけるという方針になりました。 これは大変な作業で、実は当時の副委員長湯川哲之委員(51期の委員長) はじめ皆、あまり気がすすまなかったのですが、江沢委員長の強力なイニ シアティブで決まってしまったのでした。

1995年に入って編集委員総出での作業が始まり、 私はその取りまとめ役となってしまいました。 まず大まかな分類を行い、次にもう少し細かい分類を行なうと同時に キーワードをつける。その後、キーワード間の関連をつけてゆくという 段取りにしました。

大まかな分類項目(大分類表)は、粗すぎず、 細かすぎずが 重要です。記事の全体は膨大で、眺めて調節すること が困難なため、大分類表作りは苦労しました。 項目は、理論的なもの、対象に即したもの、実験技術・実験方法に即したもの、 物理学史、社会といったものと多岐にわたり、30近くになりました。 この表に基づいて、50期の編集委員みんなで分担し、 大分類がひととおり終ったのが、95年の暮れでした。

次は大分類各項目の細目をつくって分類し、キーワードをつける作業です。 50, 51期の編集委員で専門分野を分担し、その他にも多くの方々にアルバイトとして お願いしました。各記事に 20 個程度を目安にキーワード をつけていきました。 この頃はもう冊子での出版よりも、CD-ROM や WWW での公開に傾いて いて、CD-ROM 出版の場合の見積もりや WWW運営小委員会の方々の意見交換も進めていたのです。 こうした形での公開ならば、キーワードが多すぎて困る事もない でしょうから、多めにつけておくことにしました。

図書室で古い記事を眺めるというのは楽しい仕事です。 とはいえ、気忙わしい昨今、なかなか腰が重く、 加えて大勢で分担したせいもあり、ひととおり終ったのは、96年の暮れでした。

作業は52期の委員会でも51期から残った委員を中心に続けられました。 編集委員は通例、二期務めてお役御免(毎年9月に半分ずつ入れ変わる)なのですが、 私はもう一年留年することになってしまいました。

ようやく最後の仕上げです。ここまででつけられたキーワードをもう一度見直して、 入力間違い などを修正し、関連するキーワード、 同じキーワードの別の読み方などを補う 作業です。52期委員、これまでの委員で分担し、ひととおり終ったのが、 97年の夏、キーワードは全部で 22000種類余り となりました。 各キーワードから記事への参照表などを整備して、なんとかデータベースの 整備を終えました。ここで私もようやくお役御免となり、53期の担当、 井上真委員に引き継いだのです。

振り返ってみれば、反省点も多々あります。 特に、もっと手際良くできたのではないかという事、 分類・キーワードとも今一つ統一感がない事が挙げられます。 これは編集委員 38名にアルバイター 58名という 大勢に負担を分散させてなんとか実現したということと裏腹だと思います。 実は江沢夫妻は、主要な記事以外の文献紹介などの記事のデータベース (収録1774件) をも作成されました。が、今回は、これまでは手が回りませんでした。 ともあれ、まずは第一歩となるデータベースができました。 今後の修正や改訂に期待したいと思います。

この夏、WWW での公開の目処がつき、試行を始めたとの知らせを 聞きました。 早速みると、出版年や著者名での検索、 そして、3年間の編集委員はじめ多くの方々のおかげで成った、 キーワード検索もできるようになっており、深い感慨 を抱きました。 データベースから WWW での公開するまでにも、井上委員、WWW運営小委員会 委員・関係者のご苦労があったと思います。どうもありがとうございました。 この総索引が 物理学会員共有の財産として活用されると同時に、また、広く社会に対して 物理学会の活動を知らせる役に立つことを願っております。